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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)629号 判決 1948年11月09日

主文

本件各上告を棄却する

理由

被告人裴元淑同徐大成両名辯護人本間大吉の上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りである。

しかし、賍物に關する罪の本質は、賍物を転々して被害者の返還請求權の行使を困難もしくは不能ならしめる點にあるのであるから、いやしくも賍物たるの情を知りながら賍物の賣買を仲介周旋した事実があれば、既に被害者の返還請求権の行使を困難ならしめる行爲をしたといわなければならないから、其周旋にかかる賍物の賣買が成立しなくとも、賍物牙保罪の成立をさまたげるものではない、そして原審においては被告人は富山某の依頼を受け昭和二二年八月二八日頃山口市小郡町高杉旅館等において、蒲團側一七八點外衣類手袋等を盗賍品たることの情を知りながら河本某外一名に對し賣却の周旋をした事実を認定し、これに對して刑法第二五六條第二項を適用したことは判文上明白であるから、何等の違法はない。

論旨は賍物牙保罪の成立するには、被告人において賍物たるの情を知りながら、賣主買主間に介在して賣買を遂げさせることを要するものであって周旋にかかる賣買が成立しなければ賍物牙保罪は成立しないものであるという獨自の見解に基いて原判決の理由不備を非難するのであるから、理由なきものである。

よって刑事訴訟法第四四六條により主文の通り判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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